世界は美しい。

[儚幻]

誕生日に、あの方にジッポをプレゼントしました。

安物なのに、とても喜んでくれて。

親御さんを病院に案内して、あの方の部屋をご案内して、「このライター、いただけませんか？」って。

わたくし、貴方の息子さんと、お付き合いさせていただいてました、って。

ご高齢のご両親。

お住まいが遠いし、お母様は病状がよろしくない。

お部屋の片付け、手伝わせてください。

あの方の、ひとつひとつを大事にしたいので。

部屋に人をいれるのが、大嫌いでした。

人が来るなら、片付けないといけないから、嫌だ、って。

ですけど、救急車で運ばれる数時間前。

いよいよ動けなくなって、心細くなった、って電話が。

説得して、中に入って、お顔を拭いて。

安心させて家に帰って、電話を繋げたまま、互いの寝息を聞いて。

明け方、救急車で運ばれました。

搬送先の病院で少し会話して。

また来ますね、ってキスをしました。

それが最後でした。

あの方が、見せてくれた命の色や、世界の色が失われるんじゃないか、って思った。

貴方が居ないなら、世界は輝かないんじゃないか、って。

そんなこと、ありませんでした。

貴方がくれたものは、なくならなかった。

それでも世界は美しかった。

貴方がくれた世界まで失いたくない。

世界は美しい。

全てに命が見える。

いまは、まだ悲しくて悲しくて、毎朝、貴方を思い出しては泣いてばかり。

わたくしたち、口にしなくても「こんなにデートに誘ってるんだから、察しろ」って言って、わざわざ「付き合いましょう!!」って言わなかったですよね。

照れ屋さんだから、言わなくても解るだろ、って言ってましたよね。

ですからね、悲しいけど、言いますね。

わたくしと、お付き合いしてください。

お返事、お待ちしてますね。

お待ちしてます。

[えみじ]

儚幻さん
こんなことになるなんて…
心よりお悔やみ申し上げます。

ご無沙汰してました。
茶化してばかりいた頃を
懐かしく思います。

託されたカメラ
これからも
命の色を撮ってください。
上手なことは書けなくて
泣いてもいい思い出してもいい
そう思います。
ご自分も大切にしてね。
デジカメだけど私も月を撮るようになりました😊
お二人に拙い月の写真ですが
贈らせてください。
どうか
元気でいてください。

[儚幻]

目のこと以外にも、ご病気があったので、いつかは来ることだったとは思っても、急に逝ってしまって、本当に悔しいです。

ですけど、わたくしが去年に大きな決断をしてから、ここまでの一年。
わたくしの家に何度も遊びに来たり、初めての場所に行ったり、毎週、一緒に過ごせたり、本当に幸せでした。

この一年はきっと、あの人が逝くのを待ってくれたんだ、と。
寿命を一年、与えてもらったんだ、って。
あの方がくれた最後の一年があるから、きっと世界の色が失くならなかったんだ、って。

だから世界が美しいままでいるんだ、って。

素敵な月を、本当にありがとう。

いまはカメラを持てないけど、必ず時間が解決してくれるって、知ってます。

辛くても。
生きます。