一人の画家を紹介したいと思います。
名前は加納莞蕾(かのうかんらい)、1904(明治37)年島根県布部村(現 ; 安来市広瀬町)の生まれで本名は辰夫です。
莞蕾さんの生誕の地に建つ、莞蕾さんの作品及び資料や備前焼等が展示されている「安来市加納美術館」に行ってきました。
まずは絵をご鑑賞ください。
「桃と枇杷」
「梨の木」
「薔薇」
残念なことに、一番好きな「紫陽花」が貸出し中で、皆さんに見ていただくことができません。
莞蕾さんは絵も素晴らしいのですが、それ以上に彼の行動が感動を呼ぶのです。
莞蕾さんは、戦時中には中国において従軍画家もしていました。
戦後、故郷の布部に帰った莞蕾さんは、平和な世の中を築いていく一員として、自分は何をすべきかとこれからの生き方を模索していました。
そこへ、民間人152名虐殺事件の責任者としてフィリピンで裁判を受けていた元海軍将校に銃殺刑の判決が下ったという情報が舞い込んできます。
この元将校の奥さんが莞蕾さんと同じ布部村出身であることから面識があり、「司令官として、共に戦った若者たちを死に追いやった自分の罪は大きい」という考えを持っていることを知っていて、新しい平和な世の中を築くには、このような人が必要だと思っていたのでした。
一方、元将校は裁判において「部下の行為はすべて上官の私の責任であるので私だけを罰せよ」と主張していました。
莞蕾さんは、元将校が死刑判決が出ても減刑運動などして欲しくないとも言っているのを知っていましたが、助命嘆願の活動のため上京し、知人友人を頼って助言を受け、フィリピンのキリノ大統領に嘆願書を送る方法にたどり着きます。
活動の中でフィリピンの大使など政府関係者とも交流を深め、キリノ大統領が妻と３人の子供や親族を日本軍に殺された事を知ります。
しかし莞蕾さんは「戦争の中で行われた残忍な行為は人道上赦されるものではないが、私の願いは『赦し難きを赦す』というもの」との思いで、フィリピンのキリノ大統領に40通あまりの書簡を送ると共に、ローマ法王、ネール首相、国連事務総長など世界の指導者にも300通以上の書簡を発っし、助命嘆願と恒久平和実現を訴え続けます。
莞蕾さん自筆のキリノ大統領に宛てた4番目の書簡の原稿です。
１枚目の下から3行目から4行目にかけて「赦すべからざる者を赦す」という言葉が読めます。
英文の4番目の書簡です。
莞蕾さんの書簡は、布部中学校で英語の教師をしていた村上光隆氏が翻訳をして、ガリ版と謄写版を使って仕上げられ、キリノ大統領に送られたそうです。
莞蕾さんの信念を持った助命嘆願活動が実り、ついにキリノ大統領は1953年7月6日に、日本人戦犯105名(うち死刑囚59名)に対する特赦の声明を発したのです。
莞蕾さんの活動も凄いと思いますが、妻と３人の我が子や家族を殺した日本兵を赦したキリノ大統領って凄過ぎませんか。
このことに比べたら私の身の周りで起きる腹のたつことなど本当にちっぽけなことです。
今なら、後輩と焼鳥屋に行った際に、串の盛合せから鶏皮を真っ先に食べられてしまっても許せるような気がします😅
1955年6月8日に帝国ホテルで莞蕾さんがキリノ元大統領に会った時の様子です。
この翌年の2月29日にキリノ元大統領は亡くなられています。
莞蕾さんはイケメンですよね。私はいつも俳優の池部良さんを思い出すのですが･･･
美術館のスタッフに莞蕾さんのことを尋ねていると、名誉館長の加納佳世子さん(莞蕾さんのご息女)に「どうしたの？」と声をかけられ、SNSを通して加納莞蕾さんのことを皆さんに知ってもらおうと思っているのですと答えると、記念碑の前で色々と教えてくださいました。
げッ！また妖怪とめじじいが･･･😱
写真の周りの天使は、キリノ大統領の「赦し難きを赦す」という判断により、両国が友好な関係となったことを、日本兵に殺された3人の子供が喜んでいることを表しているそうです。
莞蕾さんの長男で美術館創設者の加納溥基(ひろき)氏の写真と名誉館長の加納佳世子さんです。
兄妹よく似てらっしゃいますよね。
まとめ方が下手で、加納莞蕾さんの功績や感動がうまく伝わらなかったことと思います🙇
皆さん！是非、加納美術館に足を運んでみてください。
日本庭園で有名な足立美術館から🚗15分位です。
